
道具を一生モノに育てる相棒 Hidden Flavorの砥石
夕暮れのサイトで針葉樹の薪をパカッと割り、夜明け前の薄明かりでバゲットをザクッと切り分ける。その“気持ちいい一刀”を支えるのは、ていねいに研がれた刃である。アウトドアのそばには、いつだって頼れる刃物が寄り添っている。 兵庫県芦屋市のトリミングサロン〈犬の和心〉オーナー、小山豊さんは、犬の被毛を“まっすぐ・なめらか”に仕上げるため、ハサミの切れ味に並外れたこだわりを注ぐトリマーだ。2019年にはブランド〈Hidden Flavor〉を立ち上げ、日本の職人と手を組みながら高品質のトリミングシザーをプロデュースし、「道具を一生モノに育てる術」を探究し続けている。 その原点は阪神・淡路大震災の体験にある。家も物資も乏しいなか、祖母が包丁一本で食材をさばき家族を支えた光景が目に焼き付いた。 「非常時こそ、よく手入れされた刃物が命を守る。あのとき“研がれた刃”がどれほど頼もしかったか」 以来、小山さんは「ひとつの道具を最後まで使い切れる環境」を思い描き、〈高品質シザー〉を世に送り出したのち、ポケットに収まる〈コンパクト砥石〉の開発へと踏み出した。